掛け時計専門店|掛け時計ワールドのブログ

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ミュンヘン小僧がおやすみなさい

   

最も古い時計は古代エジプトの日時計がそれ、というのは今や定説ですが、その日時計が、水があふれ下の貯蔵槽へ順次送られていく仕組みで時間を計った水時計や、ローソクの燃えて減っていく長さを利用したものなどの様々な進化を経て、ぜんまいやおもりなどの人間が発明、製作した機器で時間を計るようになったのはつい400年ほど前。
かの有名なレオナルド・ダビンチが振り子の振幅を利用して、時を計ることに成功。
人々の生活になくてはならないものとして急速に進化を遂げたのは、1700年半ばから1800年にかけて起こった、ヨーロッパにおける産業革命の頃です。
産業形態の変革と、それに伴う社会構造の大きな変化は人々に、時間に対する厳格さを要求するようになっていきました。
それまでは、「桜の咲くころ」などという大雑把な季節の変化や、もう10回太陽が昇ったら種を播こうというレベルの体感時間で生活する集落、村という狭い顔見知り社会が基本であったものが、産業革命によって多くの人々が生活する都市が生まれたことで、全員に通用する共通の「時」という観念が必要になってきました。
「私が毎日、仕事に行くのは起きて、ご飯を食べてトイレを済ました頃」では各人の行動がバラバラになってしまうため、朝8時にみんなが集まって作業開始という基準がなくてはならないものになりました。
しかし、ぜんまいや分銅を使って動く機械式時計が初めて生まれたころは、これらの時計は一種のぜいたく品かつ大変高価なもので、美しく宝石や象嵌で飾り立てられた権威の象徴のような大型の物が王侯貴族の宮殿や館を飾り、一般の市民は市庁舎などの公共の高い塔や建物などに設置されたものを見に行って、時間を知ることができました。
ヨーロッパの各地を旅行すると、たいがい町の中心部にある広場には大きな時計がかかっているのはこの名残です。
中でも、有名なミュンヘンの市庁舎のからくり時計はその代表ともいうべきもので、時間を知らせるだけでなく、精巧な人形が(実は、見上げるほど高い場所にあるので精巧かどうかはしかとはわかりませんが)クルクル回るダンスや演奏で楽しませてくれます。
くどいほど書いて恐縮ですが、このからくり人形は32体あるそうで、結婚式あり、馬上槍試合あり、かと思えばビールの里・バイエルン(レーベンブロイが有名。軽くて飲みやすい、うれしいことに値段も安い!)らしくビール樽を作る職人たちがくるくると踊りだして、上を向いたままで首は痛くなるものの毎日見ても飽きません(毎正時、パフォーマンスしています)。夜9時にはミュンヘン小僧がおやすみのあいさつに現れるらしいのですが、黒ずんでいてはっきりと見えないのが残念。

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